対口(たいこう)支援

被災した市町を支援するパートナーの自治体を決め、応援職員を派遣する「対口(たいこう)支援」の枠組みが広がっている。

                2018年7月13日付朝日新聞大阪本社版夕刊1面

                「被災市町にパートナー 職員ら体制づくり支援」

 

「対口(たいこう)支援」とは見なれない言葉。

 

記事中の説明によれば中国語で「ぴったり合う」の意で、2008年の中国・四川大地震で中国政府が大都市などに支援対象の被災地を割り当てた方式の名称だという。熊本地震などで同様の方式が効果を上げたことから、総務省が今年度から全国運用を始めたらしい。存じませんでした。

 

政府機関などが施策の名称に外来語を使うことはよくあります。分かりやすい日本語を使えばよいのに、わざわざおかしな和製英語や、英語を中心とする「カタカナ外来語」を使うことが多い。

 

意味が分かりやすいとなにか都合が悪いのかと勘繰りたくなるほど。

 

それはさておき、中国語由来は珍しい。中国の存在感が増すにつれ、こういう術語化は増えていくんでしょうね。

 

でもこれ、公的施策の命名法としては下の下だと思う。

 

日本国民がこぞって日常会話で「対口」を使っているんならともかく、そんなことにはなっていない。災害支援に関係する部署の職員はこの言葉をよく使っているとしても、新しく担当する職員にはいちいち説明しなくてはならないだろう。一般市民ならなおさらで、この語がでてくるたびに新聞では「キーワード」欄を設けなくてはならない。社会全般に無駄な手間を押し付けるようなもの。

 

なにより字面がかんばしくない。「対口支援」では、どうしたって「たいろしえん」と誤って読むから「ロシアに対する経済支援」かと誤解してしまう。

 

今からでも遅くないから、将来の自然災害に「対口支援」が必要になるまでに、誰が見ても聞いても意味の分かる名称に変えてもらいたい。