取り残さない

避難、誰も取り残さない

                10月29日付朝日新聞「災害大国」特集の見出し

 

 「取り残さない」。別段おかしいわけではないけれど、自分ではあまりこういう言い方はしない。

 

 この紙面によると、大分県別府市が2016年から「だれひとりとりのこさない防災」というスローガンを掲げているという。

 

 2015年9月には国連が「持続可能な開発のためのアジェンダ2030」という文書を採択していて、その文中に「No one will be left behind」とあるのを、外務省の文書などで「誰一人取り残さない」と訳しているようだ。

 

 手元の国語辞典の「取り残す」の項は、「取らないで残す」「取り忘れて残す」という意味を挙げ、次に「置き去りにする」という意味を挙げる。そしてこの意味では「『~られる』の形で」と記すものが多い(「られる」に触れていない場合でも用例はみな「取り残される」の形になっている)。

 

  よく利用している国立国語研究所コーパス少納言」でキーワード「取り残」を検索してみると376件ヒットする。

 このうち「取り残され」の形が352件、「取り残す」の活用形が24件だった。この24件のうち、「手術などで病巣を除き損ねる」という意味の「取り残す」が16件、「果実などを収穫せずに残しておく」意味の用例が3件、「取りこぼす」とか「休暇を取らずにいる」といった用例が3件で、「置き去りにする」という意味の用例は2件だった。