参勤交代よろしく
「1社に参勤交代よろしく勤めるのでなく、『少しでも自分を評価してくれる大名のもとを渡り歩く』戦国武士に近いから」
10月28日付朝日新聞1面「折々のことば」
何度か読み返したのだけれど、どうもよく分からない。
戦国武士のように自分を評価してくれる大名のもとを渡り歩く生き方と対照的な生き方を指すのだと思う。それを「1社に長く勤める」というのなら、すんなり理解できるんだけれど「参勤交代よろしく」が分からない。「あたかも参勤交代のように1社に勤める」???
もとになっているのが10月17日付オピニオン面「耕論 二足のわらじ広がるか」に掲載された小説家・朱野帰子氏の発言だというので原文を見てみる。
昔ながらの男性の働き方が参勤交代にいそしむ江戸時代の武士だとすれば、女性は少しでも自分を評価してくれる大名のもとを渡り歩く戦国時代型です。
朱野氏の発言の中には「一つの会社のために自分のすべてを捧げる」「定年まで一つの会社で勤める、といった生き方の『パッケージプラン』」といった言葉がある。
戦国時代の武士が「(各大名を)渡り歩く」のに対しては、おそらく「一人の大名に終生仕える」のが江戸時代の武士だったと言いたいのだろう。
参勤交代といえば、幕府が大名や旗本に定期的に江戸参府を強いる制度で、武士たちが進んで「いそしんでいた=精を出した、励んでいた」とは思えない。
幕府の命令に逆らえば取り潰されたりするので、武士たちは参勤交代に「いそしまねばならない」立場だったとはいえるかもしれない。「参勤交代にいそしむ」とは「参勤交代のような苦役にもめげずに忠勤を尽くす」すなわち「どんな辛いことがあっても一人の大名に尽くす」ということか。
こんなふうに無理して解釈しなくてはならないというのは、インタビュー内容の要約の不備としか思えない。参勤交代を何か違うことばと誤解したのかもしれない。
「折々のことば」は意図不明な部分を抜粋してしまったようだ。
それにしても1面コラムを校閲さんが読んでいないなんてことがあるんだろうか。